こんにちは、新製品が出るたびにソワソワする変な大人ゆびきたすです!
爆熱過ぎと噂の13900K、それでもなるべく低コストに冷やせる方法はあるハズ!
(本格水冷は面倒で手が出ない)
今回はそんな記事。
2022年末に4年間使用しているゲームやクリエイティブ用途に使用している個体のCPU環境の刷新を行いました。
元々は8700K+Z390構成で、簡易水冷はFractal Design S24 にNoctua(ノクチュア)のファンを合体して使用。
8700Kのオーバークロックは意外に温度が高く、簡易水冷S24に加えてCPUを一部分解・グリスを液体金属に置き換える通称【クマメタル】化を実施していました。
今回の交換パーツは以下3点です。
- CPU/intelCorei913900k
- CPU用簡易水冷/DeepCoolLT720
- マザーボード/GigabyteZ690AORUSXTREME
- メモリ/G.SkillF5-6000J3636F1616GX2(DDR5-6000/16GBx2)
※CPU反り対策:PCER24 Anti Bent Cool Boosterも同時組込
13900Kの特性に関しては情報が比較的ある中で、最後まで悩んだのがCPUクーラーでした。
8700Kで使用した簡易水冷が想像よりも良かったので、同じく簡易水冷タイプとしました。
当初マザーのVRM冷却も可能なARCTIC Liquid Freezer II狙いでしたが、2022年末はどのECサイトにも即納品がなく断念。
すぐに入手可能だったのがたまたま今回のDeepCool LT720です。実は妥協案で不安要素もありました。
というのも購入時点でネット上でのユーザーのレビューが殆どなく人柱覚悟で購入したからです。
目の前にある13900Kを寝かせておく気の長さが無かったとも言えますね…
さて実際に購入する価値のある製品なのか気になりますよね。
当初は完全に性能置き去りの色物扱いの路線にしか見えなかったDeepcool LT720ですが、ズバリ言うと
電力制限を行っても実ゲームや実作業ではほぼ性能低下を感じないIntel 13000シリーズ。爆熱CPUゆえにキチンと調教すればより低い温度で運用も可能でしょう。なお電気代は見なかったことにしています・笑
結論としては買ってよかったリスト入りの製品です。では冷却性能はいかほどかをザックリ検証してみます。
DeepCool LT720の概要
以前の簡易水冷のCelsius S24では標準ファンは使用せず、静音を狙ってNoctuaの「NF-A12x25」を4機でサンドイッチ構造にして使用していました。
今回のLT720ではこの内3つのファンを再利用し3機をケースフロント・吸気側に配置。
追記:2023年5月にラジエター裏のエアフロー改善も狙って全部で6個のNF-A12x25に変更済。
CPU温度は誤差程度の差でしたただラジエター裏のエアフローも改善効果がありました。
いつ見てもNoctuaらしい色合いで好みが激しく分かれるところですね。
さてLT720の純正ファンの仕様は
- 500~2250RPM(PWM)
- 風量:85.85CFM(=約146m³/h)
- 静圧:3.27mmAq(≒3.27mmH₂O)
- 高負荷時ノイズ:32.9dB(A)以下
- 消費電力:2.64W
4隅のネジ止め部は防振のためかゴム素材になっています。
対してNoctuaのファンは
- 回転数:450~2,000PM(PWM)
- 風量:約60CFM(公称値:102.1m³/hから計算)
- 静圧: 2.34mmAq(≒公称値:2.34mmH₂O)
- 高負荷ノイズ:22,6dB(A)
- 消費電力:1.68W
以前からNoctuaは静かで風量がある!と聞きます。しかしNoctuaと言えど最大回転近くで回せばやはりうるさいです。音質の傾向としては音質的に低く耳に付きにくい感じがするのはチューニングの上手さでしょうか。
さて今回の比較ではDeepcoolのファンの方が最大の風量・静圧ともに仕様上では上です。しかし管理人の使い方として普段最大性能の高回転域であることの方が少ないのも事実です。
Noctuaのメリットは静音性とそこそこの風量とのバランス、そして所有感でしょうか。
さてLT720のラジエターに関しては見た目的にもよくあるアルミ製の25mm厚前後のものです。
ラジエターの密度を測るFPI(Fin per Inch)でチューブ1インチ当たりのフィンの数を調べてみましたが、公式サイトには記載されていませんでした。
海外サイトで確認すると正確な情報なのか拾い切れませんでしたが
- LT720レビューでは実カウント21~22
- よく似た360mmラジエターを採用するLS720がFPI=22前後
- 1つ下のモデルLT520がFPI=20前後
カウントの誤差も考えると20~21ほどでしょう。
なおFPIが高いほうが手放しで良いのかと言われるとそうではなさそうです。
フィンの密度が高いと空気抵抗が大きくなります。冷やすためにはより風力が必要になります。
サラッと調べた感じ360mmかつ25mm厚前後のラジエターでは15~20あたりが一般的なFPIのようです。LT720はやや高めの密度になります。
そのため風量の大きなファンを付属品としていると想像しています。
※各方面でレビューが増えてきた段階で散見するのが純正ファンの故障。保証期間を過ぎる頃にはファンの代替案を用意しても良いかもせれませんね。
比較としたFractal Design Sirius S24にあるようなファン用のピンがラジエターに付いているなど、独自な機構は特に無さそうです。
S24は31mm厚ラジエターでFPIは21です。
冷却ヘッドの特徴は
- 3100RPMまでの強力な三相駆動モーター
- シームレスな厚い固体銅ベース
以上のように冷却ヘッドのカバーのデザイン以外は思ったより普通でした。
LT720の美しい見た目
LT720のデザインに魅せられたならばこれだけでズバリ買い。マザーのアドレサブルRGBの端子に接続することによってコントロールができます。
最近の製品ではOS側にソフトをインストールして使います。Gigabyteで言えば「RGB Fusion」というソフトウェアを適用します。
ただこのソフトは2年前のRTX3090導入時にフリーズや動作不良で膨大な時間が掛かってしまったことを思うと食指が動きにくい印象。
しかし環境も刷新したため、検証のため入れてみると予想に反して普通に動作して驚きました。
やはりRGBコントロールできた方が自由度が高くて良いですね。
当時からRGB Fusinのバージョンアップによって改善したのか、マザーメーカーがGigabyteになったのが良かったのかは不明です。
※当時3080全盛で、爆熱Gigabyte RTX3090を情報が少ない中何とか最適化した記事は以下です。
LT720の冷却性能(1)
13900KはZ系マザーと組み合わせればオーバークロック可能な動作周波数アンロック個体です。しかし各種レビューで見られる性能向上の割合とそれに対する急峻な消費電力や発熱上昇の傾向を見て断念。そもそもゲーム用途では効果は薄く、元々芳しくないワットパフォーマンスがさらに悪化します。
本格水冷ではない環境では厳しいと予想し、今回は13900Kの仕様にもとづきパワーリミット(以下PL)運用を行ってみます。
その他電力制御に関しては完全にマザー設定はデフォルト。
- PL1=PL2/253W(=MTP/MaximumTurboPower)
- Tau=56s(短期間電力制限時間)
LT720+Noctuaファンx3 で冷やしきれるのか確認します。
ベンチマークはOCCTと3D MarkのCPU Profileで行ってみました。
まずOCCT設定は
- データセット・・・小
- テストモード・・・Extreme
- 負荷タイプ・・・変動
- 命令セット・・・自動
- 使用スレッド・・・自動
- 時間・・・30分
- 95℃超で即時中止の安全設定
手始めに短めの30分の温度確認。室温は21℃で低めです。
まず開始1分ほどの途中経過時、瞬間最大81℃でスクショ時79℃でした。
さてどこまで温度上昇するか見ていきます。
下の画像は負荷テスト完了直後のもの。最高温度は1分後と変わらず81℃で、温度変化をみているとだいたい77℃~79℃で推移。
これは十分熱移動・冷却ができているということだと思います。余裕で90℃に収まったので結果としては満足ゆくものでした。
別の日に60分間回した結果、室温20℃、ソフト読みで最高83℃でモニターを見ていると高負荷時は78~80℃をウロウロでした。
あとは夏場の状況が気になります。
室温が25℃を超えてくると90℃に到達する可能性が高いです。
次に3D Mark CPU Profileの結果。
最大16スレッドまでですが問題なく冷やせています。
今回はNoctuaファンに同時交換したためLT720純正ファンの性能が測れていませんが、それほど大きな差が出るとも思えません。簡易水冷としての素性は悪くなさそうです。
確認の意味でCPU-Zの簡易ベンチ中の温度は意外にも試したソフトウェアの中での最高温度でした。
LT720の冷却性能(2)13900Kの簡易的な低電圧化での効果
記事の趣旨から外れますが、13900Kを少し低電圧化したテストも実行。
そもそもGigabyteマザーでは日本語で解説されている情報があまり見つかりません。マイナスオフセットやLLC(ロードラインキャリブレーション)を駆使してやってみても、温度的な効果がなかったりBSODやアプリ落ち頻発でなかなか決まりません。
色々行ってみた結論として
- Vcore電圧モードはAuto
- CPUVコアのモードはNormal
- DynamicVcore値は-0.145V
※ここの項目は上の「CPUVコアのモード」がNormalの時のみ適用可 - LLCは「Low」モード(下から2番目)
ザックリ調整すると以上のような設定値で安定しました。
温度や安定性確認としてCinebench R23やOCCT@1時間を使いました。
Cinebenchは問題なく完走、OCCTを1時間という条件ではオフセット-0.160vや-0.155vでもエラー無し完走。
最大温度も室温20℃で75℃前後と低くて良いのですが、低負荷時にBSODが発生。低負荷時に電圧不足になるようです。
結果的に-0.150で安定しましたが、常用のため余裕をみて-0.145としました。
以下2つのソフトでオフセット-0.145v時の温度を確認。
まず室温20℃でR23を走らせたところです。
スコア的にはマルチスコアでギリギリ4万超えですが、電圧を触る前と比べて少し落ちています。
下の画像は室温が低いの19℃時OCCT(データ:小/Extreme/1時間)という条件で走らせた結果。
19℃というのは暖房を軽く使用して、作業やゲームプレイに快適な温度としました。
PL253Wで最大温度75℃(Enhanced項目)なのでまずまずかなと思います。夏場にはエアコンを付けないと軽く30°を超えてきます。エアコンを使用し快適温度な26度付近に設定すれば85℃は切れるか?といった予想です。
どちらにしてもエアコンは必須です。噂に違わず爆熱性能もトップクラスでしょう。
LT720をはじめ簡易水冷式クーラーの注意点
ここではいくつか注意点を挙げてみます。一部手先の器用さが試されます・笑
基本的にLT720の性能には大きな弱点と感じるポイントありません。
そのため1番目の開梱の注意点を除き、簡易水冷で管理人が気を付けている点を挙げてみます。
LT720のダメポイント:史上最強に剥がしにくい保護シール
装着までキズを入れたくない方はご注意を。
まず開封して眺めていると、既に薄っすらとヘッドの照明部に既にキズらしきものがチラホラ見え一瞬ドキッとします。
しかしよく見ると透明部分に保護フィルムが貼り付けてあります。しかしこの保護フィルムが難儀で、かなり強力な粘着力。
そこで用意した粘着力の強い重梱包用の布ガムテープ。
剥がしにくい場合ガムテープで端を浮かしたりします。しかしそれでも全く歯が立たず。
因みに名刺など硬めの紙をU時にして角を浮かそうとか色々考えましたが、絶対にキズものになります。最後は根気よく指と爪で優しく擦って浮かしました。
想像以上の面倒くさい作業でした。もうやりたくない…
少しでも浮けばマイクロセームなど柔らかい布でコスって端をめくり、指でつまめるくらいまで更に浮かします。
RGB調整は必ずアドレサブル端子へ
LT720のヘッドカバーのRGB端子は「3ピン」のアドレサブル・コントロールのタイプです。
接続するときマザー側の端子に注意が必要です。
RGBコントロール用の端子には、単色に光るものを除き2つあります。
- 4ピン:RGBLED(+12V)
- 3ピン:アドレサブルRGB(+5V)
この2つはそもそもピンの数・レイアウトは元より、出力される電圧値が違います。
詳しい解説は以下のパソコン工房さんのサイトを参考にして下さい。
RGB LEDとアドレサブルRGB について | パソコン工房 NEXMAG (pc-koubou.jp)
今回のマザーではマザー側のLED端子に付属の2又ケーブルを刺し、このケーブルにアドレサブルRGBデバイスとRGB LEDデバイスを刺すように指定されています。
LT720のアドレサブルケーブルを2又ケーブル側の3ピンの方へ刺します。
なおZ690 Aorus Extremeの端子の許容電流容はそれぞれ2Aですので、お使いのマザーの電流規格も一応確認しておきましょう。
ラジエターとポンプの位置関係
物理の法則でラジエター内ではエアがより高い位置へ移動します。
そして水冷ヘッドに内蔵されている圧送ポンプはエア噛みを繰り返すと加熱して故障の原因になります。
密閉機構なのに冷却水が減ってしまう理由
簡易水冷は本格水冷と違い、エア抜きも担う可能なリザーバタンクがありません。構造上密閉されているのですが、実際には水冷機構内にエアが長期に渡ってゼロでありません。また液量減少の症状が出ます。
考えられるエ原因は2つ
- 接続部などからの液漏れ
- ホース劣化などによる液量減少
②についての補足:
もちろんチューブなどは水や水蒸気は通しません。
しかし熱・経年などによりチューブ内外には必ず硬化や劣化の現象が起きます。
一般的に冷却水と呼ばれるものには浸食性があります。
例えばナイロン系ホースは素材自体の水分や油分が抜けた場合、その抜けた部分が冷却水に浸食されてその分冷却水が減少します。
液漏れは短期間に液量が減少し、ホース内浸食では長い期間を経て必ず液量が減ります。
※耐久性については明言できないのですが、3年~4年で交換するのが良いと聞きます。
そして液漏れは論外としても、通常使用における液量の減少には対処しておく必要があります。
ラジエター部のレイアウトを考える
レイアウト上ではエアが溜まる場所がヘッドにならないようにレイアウトする必要があります。
つまりヘッドよりもラジエター部を高い位置に設置すること
最も確実にヘッド部よりラジエターを高く設置できる位置は天板設置のパターンです。
しかし静音性を重視する場合、ファン部を遮音することができなくなります。
またマザーとの干渉、排気ファンとの干渉などケースによってはなかなか難しいケースも多いでしょう。
幸い使用中のDefine R6では、5インチベイを取り外せば融通は利きます。
しかし静音性を重視する場合は、フロント設置がベターだと思います。
ケースのフロント位置への設置は、一番冷えている空気でCPU冷却できるのが大きなメリットです。
特に高温の排熱を行う内排気型のグラフィックカードを装着している場合、その排熱の影響を回避できるのが大きなメリットです。
さて次に、フロント設置の場合ホースを上側にするか下側に持ってくるか、の問題。
管理人の場合は下図のようにホースは上側です。
それはグラフィックカードに干渉するためで、避けようとすると今度はホースの長さが不足します。
一般的には上の画像のようなレイアウトをされている方が多いのではないでしょうか。
因みにホースはラジエター下端に接続される方法がベターとされています。
なぜホースが下の方が良いのかというと、上の画像のようなエアの動きのイメージです。
冷却水が減ってくると当然ラジエター上側にエアが溜まります。
接地例の多いと思われる、ホースが上側レイアウトの場合を考えます。
万が一漏れなどで急激に減ってしまうとラジエター上部の水面が下がり、冷却水の循環に支障を来たします。そのためポンプがエア噛みを起こす可能が出てきます。
その点ホースが下側に接続されていれば、ホース内は水切れする可能性は低いです。
設置可能かどうかはヘッドからケース前面のラジエター取り付け部までの距離などにも左右されます。
因みに管理人はホースが上レイアウトで妥協しています。ホースが下になるレイアウトはグラフィックカードが邪魔でケースフロントに届かないためです。
その中で1つ対策しておきたいのは
水冷ヘッド部よりもラジエタートップ部(ホース部)を高い位置にすること
水中の空気は高い位置に上るため、ヘッド部にできるだけ空気が溜まりにくいように高低差を付けます。
通常360mmくらいのラジエターだと、ケース下端付近から固定してもトップ部はヘッドよりも高くなることが多いと思います。本当はもっと高低差があった方が良いのですが、スペースの限界です。
逆に240mmや280mmなどのラジエターの場合、できるだけ上固定するように調整してみて下さい。
ケース全面固定かつホースが上になるレイアウトではこれが一番簡単にできることです。
他に加工などが必須となりますが、ヘッドからのリターン側ホースとヘッドへ冷やした冷却水を送るホースとで高さを変えるくらいでしょうか。ケース正面からラジエターを見ると、斜めに固定されているイメージですね。難易度は少し高そうです…
まとめ:見た目良し、冷却性能良し
今回は事前に「高消費電力・爆熱世代」という事実を見聞きした上で、仕様通りに253Wのパワーリミットを施して使ってみました。
その状態であればLT720で使う限り、常用においても温度的な心配は全くなかったのが結論です。
簡易水冷というとハイエンドの空冷よりも劣るなどネガティブな世評も散見するなか、LT720は「冷やせる」クーラーです。
次はCPUの各種の制限を解除したらどうなのか、どこまで低電圧化できるかいろいろ気になってしまいます。
また今回はNoctuaファンNF-A12X25 PWMへの換装の上での温度でしたが、風量的なスペックはLT720純正の方が上です。
仕様上はLT720純正ファンだともっと冷えそうですが、ファンノイズに関しては妥協する必要がありそうです。
水モノだけに冷却液漏れの危険性は常に付きまといますが、作業を考えても本格水冷式より失敗が少なく、メンテがとてもラクなのがメリットの簡易水冷。
新しいCPUクーラーを検討する場合、今回のDeepCool LT720を1つの選択肢にしてみてはどうでしょうか?
では!