こんにちは、押し入れの外付けHDD在庫の多さに溺れそうなゆびきたすです!
10数年バックアップ用に3.5インチHDDを使ってましたが超邪魔…
「バックアップさえあればPCがつぶれてもどうにでもなる!」
太古の時代から存在する3.5インチ型外付けHDDでバックアップを続けておよそ10数年。
容量当たりの単価の安さで何となく使ってきました。
使用中の外付けHDDはデカイ・重い・配線が邪魔と3重苦です。
しかし2023年も暮れ、バックアップ用途や倉庫用途でもSSD!の時代。
1GBあたりの単価も以前ほど高額ではなくなったのもそう感じた理由です。
そこで「少しだけ大柄なUSBメモリ」であるスティック型SSDをバックアップ用として導入してみました。最近ではコンパクト重視の製品も各社から登場していますが、中身はどうなっているのだろうと素朴な疑問も。
経験上USBメモリ(USB3.0系)が軒並み「熱い」印象で、筆者のなかではあまり印象の良くないSanDisk製であえて検証してみます。中身はWDとのコラボかもしれませんが。
3.5インチの外付けHDDと比較して
- 圧倒的にコンパクトで収納性最高
- 読み書きスピードもUSB3.2 Gen1(5Gbps)はそこそこの速度
なおUSB規格に関しては USB3.0=USB3.1 Gen1=USB3.2 Gen1 です。
今回の製品はUSB3.2 Gen1という表記で何となく速そうな雰囲気ですが、USB3.0(5Gbps)と全く同じですね。
また5Gbpsを別の表記にすると、625MB/s(秒間625MB転送)です。
結果的には配線いらずのそのコンパクトな筐体から収納性や扱いやすさが最高です。
ただし気になるマイナス要素がありますのでザックリ解説します。
1TBモデル【SDSSDE20-1T00-GH25】の概要
2023年11月に発売された「サンディスク Slim ポータブル SSD」シリーズの特徴は以下の通りです。
- 最大420MB/秒の読み出し速度
- 接続インターフェース:USB 3.2 Gen1
- 外寸:(厚)11.0 X (幅)21.0 X (長)71.0 mm、重さ:171g
- 動作時の温度範囲:0℃~35℃
- ストレージ温度/非使用温度:-10°~70°C
- アルミメタル筐体
- 3年間の製品保証
- (要らないけれど)暗号化ソフトが付属
データシート(PDF)は公式のコチラから。1TBモデルを発売後すぐにWD公式から購入してみました。
広告などでアピールされる「最大420MB/秒」は恐らく連続の読み出しの速度でしょう。
ベンチマークソフトでシーケンシャルリードと言われるものですね。
しかし謳われる性能は高いが、例えばローカルからのファイルコピーが思ったより速くないなどの事例は普通にあります。
そこで簡易的なベンチ検証のあとに実際の転送に掛かった時間や平均の転送レートを確認したいと思います。
実行してみた環境はブログなどの軽作業用のエントリースペックのPCで、処理速度の速いタイプではありません。
USBポートが今時USB3.0止まりなのも少し不満なのでMicroATXのマザーだけ載せ替えようかと考え中です。 (→1週間後B760Mへ換装済)
- Windows10Pro(22H2)
- CPU:Intel Core-i3 12400
- マザーボード:ASUS PRIME B660M-A D4-CSM
- メモリ:TEAM ELITE PLUS DDR4/3200 16GB×2枚
- グラフィックス:ASUS GTX1650-O4G-LP-BRK(LowProfileモデル)
- SSD:WD SN550 1TB(+WD SN750 500GB/WD SATA 2.5 Blue 500GB)
- USBポートは2.0および3.0のみ
使用したUSBポートは3.2 Gen1互換のUSB3.0です。
簡易ベンチマークの結果
ザックリ検証として、定番のCrystalDiskMark(v8.0.4 x64)とゲーム分野では有名な3D MarkのStorage Benchmarkを使ってみました。
計測時の室温は共に22℃です。
CrytalDiskMark
まずは空の状態で1GiBデータでテスト。
参考程度の公称「最大読み込み420MB/s」はクリアのようです。最高温度はセンサー読みで86℃。アイドルから30℃以上も急上昇です。
因みに環境によるものなのか、アイドル時ですでに48~50℃と高めです。
続いて64GiBでテスト完了。
ランダム性能がガタ落ちします。温度は最高87℃で同じく高いです。
色々試してみても、そもそも冷却環境のない中動作しているので室温はそれほど関係ありませんね…
3DMark Storage Benchmark
お手軽な3DMark Storage Benchmarkを使ってみます。このベンチは主にゲームおよびその周辺動作に関するテストであり、本来ゲームのインストール先に指定することほとんどなく不適切かもしれません。
ただ大小様々なファイルによるアクセスタイムや条件を変えた転送率を表示できるので敢えて使ってみました。
ただこのベンチマークには少し注意点があります。
- 3DMark独自のスコアは比較しにくい
- 平均転送量(MB/s)、平均アクセスタイム(μs)で平均のみの表示
本来PCMark10 Proに内包されるストレージベンチマークを使う方が有益なのですが、年1595ドルのサブスクは貧乏ブログには途方もない世界で…
準備段階でおよそ15GBほどを検証ドライブ直下に書き込みます。テスト時間は約10分との案内ですが、それを除く準備時間で8分ほど経過。
最高負荷が長く続くわけではないので温度的にはそれほどでもなく、CrystaldiskInfoのログで最高69℃(室温18℃)でした。
そして完了後のスコアは…
結果は最高336という数値。日を変えて2回走らせましたがスコアは同じくらいでした。
各種テスト項目別の帯域幅とアクセス時間は上の画像の通り。得手不得手が如実に表れています。
ウェブ上での比較を見てみると筆者以外にもうおひとかたベンチを行っているようですが、ベンチの日付を見ると違う製品のようです。なかなかレアな体験でした。
数ある中のSSDの平均スコアは2194、最高22676とのことでさすがに内蔵のNVMe規格SSDは別もの扱いです。ゲームのバックアップにはまだしもランダムなアクセスが多いゲームファイル置き場としては適さないかもしれません。
実稼働環境でのコピー速度(MB/s)
ベンチマークの数値は以上のような感じでしたが、これらは正直あまり実のある数値と言えないでしょう。実際にコピーして計測するのが実環境に即していると思います。そこでシンプル1本筋の【DiskBench】というソフトを使ってみました。
このソフトはコピー元のフォルダ、コピー先のフォルダを指定してコピーボタンを押すと同時にタイム計測してくれるものです。そこから平均にはなりますが転送レートも割り出してくれる、シンプルながら便利なソフトです。
325GB分(フォルダ数23、ファイル数は111個と少なめ)をローカルSSDからSandDiskへ、SanDiskからローカルSSDと2種類で試してみました。
室温は共に18℃です。
まずはローカルSSDのWesternDigital SN750からのSanDisk USB-SSDへのコピーで、書き込み速度をチェックしてみます。
- 所要時間・・・29分19秒
- 平均転送レート・・・189.34MB/s
- 最高温度・・・88℃
という結果でした。転送レートを別の単位に直すと「1.5Gbps」です。
次にSanDisk USB-SSDからローカル環境のWD SN750へのコピーで、読み込み速度を見てみます。
- 所要時間・・・18分23秒
- 平均転送レート・・・301.99MB/s
- 最高温度・・・72℃
でした。転送レートの単位を変えると「2.5Gbps」です。
USB3.0(=USB3.2 Gen1)の規格の最大理論値は630MB/s(=5Gbps)ほどですが、実測のファイルコピーでおよそ半分でまずまずの結果だと思います。
ちなみに小話を。
あらぬミスをしてしまい当初かなり低い速度で焦りました、購入したことを後悔するくらい。
それはUSBをゆっくり挿してしまったこと。
USB3.0をゆっくり挿すとUSB2.0として認識してしまう
USB3.0をゆっくり挿すとUSB2.0として認識してしまう (elecom.co.jp)
これは有名な話でメーカーもそういった情報を公開していますし、ねとらぼさんでは図解入りで解説してくれています。
かならず「シュッ」と挿しましょう(笑
HD Tune Proで全域書き込みテスト
最終更新が2019年とソフトウェアの鮮度的にもちょっと疑問符が付くHD Tuneですが、San DiskスリムSSDをチェックしてみたのが上の画像。
キャッシュ切れのポイントを見てみようと思ったのですが、60GB付近でキャッシュ切れなのか、その後えらい動きをしています。
平均速度も127MB/sと振るわない結果になってしまいました。
(速度低下の少ないUSB 3.2 Gen2ハブを使用してのテストでしたが後日際検証してみる予定)
なおテスト時には総書き込み量2TBほどで体感的には特に変化はありませんが…
SanDisk Slim USB SSDのなデメリット
デメリットと感じる点は
- 温度が高い
- 質感GOODな筐体だがスライドノブが滑る
- 用途により書き込み速度の問題が出る
まず気になるのはフルアクセス時の温度。
さまざまなテストをしていて一番気になります。
例えばWindowsのディスクの管理からのフォーマットでは最高89℃を確認。高負荷状態では86℃~88℃(一瞬89℃)を頻繁に行ったり来たりしていることから、90℃近くでサーマルスロットリングを起こしている可能があります。
手で触れないほどではありませんが、かなり発熱しているのが分かります。特にベンチ直後に抜いたときのUSB端子部の過熱は少し危険を感じるくらい。
しかし何度も連続テストしても熱暴走で転送ストップや接続切れのようなクリティカルな不具合が一切発生しないのは安心材料でしょう。90℃近いとかなり怖い温度ですが…
次にスライドノブ。
コンパクトさを追求した影響からかノブの高さがかなり低いです。
横から見ると分かりますが引っ掛かりが小さく、アルミボディと相まって全体的に滑りやすい印象です。
そのため中途半端にUSB端子を出してしまい、ロックされいない状態のため、いざ挿すときに引っ込んでしまうということが何度もありました。
「カチッ」とクリック感があるまで出し切る必要があります。
最後がWin-PE系のブータブルメディアによるバックアップ時の書き込み速度が遅いこと。
バックアップ中観察していると「残り時間」が初めは10分以下で完了予定ですが、見ていると40分や60分とドンドン増えていきます。ただし特殊な用途のため、この症状にで遭遇しない方も多いと思います。
- Paragon Hard Disk Manager 17 Pro:ブータブルUSBメモリでバックアップソフトウェア(Win-PE)でフルバックアップ
- USB3.0ポート/USB3.2 Gen2ポート(マザーは3種類で試行)でいずれも完了時間が外付けHDDよりも遅い
筆者としてはこの用途をメインと据えていただけに少し残念ですが、1つ失念していたことがあります。それは
ブータブル起動されるOSに内蔵されるUSBドライバーの種類によるのでUSB3.0系とは限らない
Windows起動中であれば該当ドライバーが当たっているのでUSB3.0系で動作しますが、ブータブルOSによってはUSB2.0動作している可能性があるということ。ブータブルOSが何をどのように認識しているかはそれ用のUIがないため正確に確認できませんでした。
なお今回のSanDisk製スティックSSDだけではなく、前項で少し紹介したエレコム製のスティックSSD(2本購入)でも全く同じ症状です。
ただ外付けのUSB3.0接続のHDDよりも遅いのが非常に気になります。
スティックSSDが根本原因ではなく組み合わせの問題かもしれません。
その証拠に先のHDDとは違いWindows起動中のコピー操作ではほとんど不満が出ない性能です。
結果的にブータブルメディア・バックアップでは所要時間が1時間30分を超えます。随時圧縮しながら分割保存されているのも関わっていると思いますが、使用容量70GB強に対し、保存容量は30GBほど。
ただPC内蔵の別SSD(m.2 NVMe/WD SN570)だとなんと3分~5分ほどで完了するのでUSB外付けとは根本的に違います。
※内蔵m.2 NVMe SSD(SN770)を別ドライブの内蔵m.2 NVMe SSD(KIOXIA)へバックアップ
考えられる原因の1つ
ブータブルメディアによるバックアップには相性のようなものがあるとして、別の要因もあります。
原因の1つにキャッシュ構造にありそうです。
当製品はDRAMのような物理的なキャッシュをもたず、SSDデータ領域(NAND)にキャッシュを置いて利用するSLCモードの可能性が高いこと。
つまり数十GB書き込んだのちにキャッシュ切れを起こし、SSDのNANDチップの素の速度になっている可能性があります。
お上メーカーのWDでDRAMキャッシュ付のm.2 NVMe SSDであるSN850Xの1TBの価格帯($109.99/日本オンラインストア¥16,940)を見てもDRM付という可能性は低いでしょう。
※当製品SanDisk SlimポータブルSSDは日本限定のようで海外では販売されていません。
External SSDs: Shop External SSDs to Plug Into Your Devices | Western Digital
つまり初期の書き込み速度は速いが書き込み量と時間によってだんだんと速度低下している挙動です。バックアップソフト上では「転送率(速度)」が表示されないだけにエビデンスのない体感に頼ることになりますが、遅すぎてブータブルメディアによるフル・バックアップ用途は使用に耐えないという印象です。
これは他社製含めてスティックSSD3本をPC4台ほどで検証するなか、すべて同じ挙動だったのでSanDisk製SSDが…ということではなさそうです。
なお普段から行う数GB単位やそれ以下のコピー用途では問題に遭遇することはほとんどありません。
しかし先のキャッシュ切れ時には大きく速度低下するので注意が必要でしょう。
まとめ
3.5インチの懐古な外付けHDDの置き換えにUSB3.2 Gen1規格のUSB スティック型SSDを使ってみました。
普段のこまかなバックアップ用途でHDDと比較すると携帯性・収納性抜群かつ高速でおすすめできる製品です。
しかしながら注意点もありました。
環境と用途が限定的ですが、ブータブルメディアを利用したOSディスクのフルバックアップには速度低下が大きすぎて一切適しません。
用途は普段のファイルバックアップ用途に特化すれば不満は出ないでしょう。
またスティック型SSDのDRAMレス構造の制限で大容量サイズの書き込みは内蔵型のそれと比較して、より大きな速度低下の不安があります。
絶対的に速度が欲しい場合には、例えばm.2 NVMeのSSDをUSB 3.2 Gen2対応のUSB接続ケースへ入れて使用する方が無難です。しかし携帯性などの利便性は悪化してしまいます。
また外部からの冷却が望めないため温度が高めです。
エクスプローラの転送の詳細を眺めていると、転送速度に若干ムラがあるのは発熱の影響が大きそうです。内部温度センサーがどこに設置されているかで数値は変化しますが、温度は間違いなく高いと思います。
そのため耐久性に関しては経過観察です。
SanDisk Slim Portable SSDは手に取った瞬間、電源ケーブルや接続ケーブルの煩わしさから完全に開放され、利便性・時短性どちらも外付けHDDの上位互換です。
定期のファイルバックアップのたびに収納庫から外付けHDDを取り出し配線をして、という面倒なプロセスが無くなりとても快適になりました。
また記事中ではそれほど触れていませんが、手触り・質感は十分な所有感を得られます。
このスティック型のSDDは用法容量を守れば、と注釈が付きますが省スペース・携帯性の良さで非常に優れたもの。
高速とうたわれるスティック型SSDを探し求める旅はまだまだ続きそうです…「大容量ファイルも安定して高速書き込みできる」という条件をクリアできる製品に出会えるその日まで。
では!